裾合分岐に行くまでの道は、紅葉のトンネルです。 色づき始めたばかりのウラジロナナカマドは、葉も痛んでいないので、オレンジ色がと ても鮮やかに映えています。
いつも感激する当麻岳・安足間岳、大塚・小塚の紅葉は期待に答えて、綺麗に色づいていました。それでも昨 年の同じ時期より10日以上も遅いと思われます。

裾合分岐で5分ほど休憩して、迷わず中岳方向へ行くと、撮影ツアーらしき人たちが大勢で大きなカメラを構えていました。
下見に来た時はチングルマの綿毛が輝いていましたが、今は葉が赤くなり、絨毯を敷き詰めたように埋め尽くしています。山の斜面の紅葉 も綺麗なのですが、このチングルマの葉の紅葉が素晴らしい！裾合分岐から中岳温泉の手前までずーっとこのような美しい風景でした。

お鉢平のすり鉢の内側はコントラストの強い紅葉です。今が見ごろの 時期ですね。ここで自分の身体に問います。「まだ大丈夫ー？」「まだ全然大丈夫！」。 では一昨年登った中岳まで行ってみよう。少しず つ高度が上がってくると、お鉢平の全容が見えてきます。おお！ダイナミック！中岳までは行ったことがありますが、その先は未踏の地で す。

北鎮分岐もすぐそこに見えるので、迷わず進みます。大丈夫。行ける行ける。休憩をとらずに一気に北鎮岳山頂に向かいます。

北鎮岳には、4年前北海道では初登山となった黒岳を登ったときに、その山の形が優しく美しかったため、 いつか登りたいと思っていた山でした。赤岳からも当麻岳からもその美しい姿を見る事ができました。2年前チャンスはあったものの、 断念しました。
そんな山に今登ってい るんだと思うと、急に胸がいっぱいになり、うるうると来そうになりました。
感激しながら登っていると、あっという間に山頂に着いてし まい、360度の雄大な景色を見る事ができました。 全景を見る事ができるお鉢平。この山から見るのが一番綺麗に見えるのではないかと思います。
ニセイカウシュッペ山などの北大雪の山。黒岳・烏帽子岳・白雲岳。石狩岳などの東大雪の山。そしていつも雲が掛かってその姿をあまり 見せてくれないトムラウシ山。旭岳の奥のほうに見える十勝岳。安足間岳・比布岳・・・周辺の山々を一度にこんなにたくさん見られるこ とも珍しいかもしれません。黒岳が低く見えます。雲ノ平の紅葉も綺麗ですね。 北鎮岳。北海道では旭岳の次に高い山。北の峰に鎮座して、静かに優しく見守ってくれる母のような山に感じてなりません。念願かなって 登った山でしたが、予想以上に良い山でした。

さて、せっかく登った北鎮岳でしたが、山頂は風が強くて寒く、手が悴んで来たので、おにぎりを一個だけ食べて下山しました。北鎮分岐 にはたくさんの人がいました。中岳分岐にもずいぶんたくさんの人がいました。
中岳分岐から裾合平に向かって歩き始めて周辺を見渡すと 紅葉が進んでいるような気がします。時々晴れ間も出ていたせいか、紅葉はもっと鮮やかになりました。中岳温泉に下がる前に、熊ヶ岳と 旭岳の裾野に広がる紅葉を見ながら、あらためて昼食をとりました。ここを降りるとこの景色はもう見る事ができません。目に焼き付けよ う。

何人か目の前を通り過ぎ、その後下山開始。中岳温泉も通過し、またまたチングルマの絨毯の中を歩きました。 晴れ間が出ていて赤色 が一層鮮やかです。やはり紅葉も今日一日で進んだような気がします。朝と比べてここを歩く人も多くなり、みんな口々に「綺麗ねー」と 言っています。なんだかこの世のものではないような気がします。

裾合分岐を過ぎると雲が低くなってきました。途中、最後の一枚の写真を撮り終わると急に雨が降ってきました。 写真を撮り終わるのを待 っていてくれたようです。
午後1時半。いつ来るかいつ来るかと不安に思っていた雨ですが、姿見駅までもう少しというところまでもってくれました。レインウェアを 着込み姿見駅に午後2時ジャスト到着。目の前のロープウェイはまだ出発していませんでしたが、乗せてもらえませんでした。残念！2時15 分に乗り込み、ようやく自家用車にたどり着きました。帰りはいつものように勇駒荘でまったりしました。（いつもは広い内湯なのに、今 日は狭いほうでした）

北海道の屋根と呼ばれるこの山は一年の4分の3は雪に覆われています。今年も最後の輝きを見せてもう間もなく白銀の世界に入っていきま す。毎年思うけれど、大雪山には人を惹きつけて止まない何かがあります。今年も赤岳・小泉岳のお花畑と裾合平の紅葉・北鎮岳の雄大な 景色を楽しませてもらいました。ありがとう大雪山。